480EX:By Ralph Diaz, Courtesy of Folding Kayaker Newsletter

[vc_row][vc_column][vc_column_text]PE-480EX インプレッション by ラルフ ディアズ
米国・フォールディングカヤッカーニューズレター2002年・春号[/vc_column_text][vc_column_text]日本ではかなり早くからフォールディングカヤックを生産しているが、ほとんどが日本国内向け生産の為、今迄海外で見る事はまれであった。しかしながら、フォールディングクラフト社により今春からフジタカヌー社の多くのモデルが米国内で輸入販売される事となった。
フジタカヌー社は日本のフォールディングカヤックをリードするメーカーで、グラスファイバーポールとウッドのリブを組み合わせたモデルと、アルミフレームのモデルを生産している。前者のモデルがフジタカヌーを代表するモデルで耐久性も高いツーリングモデルである。今回はフォールディングクラフト社の勧めにより、代表モデルであるPE-480EXをテスト試乗してみた。
日本製のフォールディングカヤックを知っている人達から聞くと、日本製の物は特別に良く作られている訳ではなく、強いて言えばまあまあとの事だった。特に、使われている素材が貧弱であるとの事でもあった。こうした話しを聞かされていた事と、日本製カヤックを見るのは始めてという事もあり、私の熟知している他ブランドに比べて日本製品がどれだけの物なのか、とても興味のある機会となった。
全長16フィート弱のPE480は、フォルボット・コディアック、クレッパー・アエリウス1、ノーティレイ・レイド1といった15フィートクラスのモデルと、フェザークラフトK1、ノーティレイ・グリーンランダーといった16フィートのフルサイズモデルの間にちょうど良く収まるモデルで、今回こうしたモデルと対比する上でも、このPE480はちょうど良いモデルである。[/vc_column_text][vc_column_text]第一インプレッション
フジタのPE480は、私の好みにピッタリで事前に聞いていた日本製に対する固定概念とは全く違っていた。先ず感心したのが、付属のキャリーバッグである。フォールディングカヤックの重要な特徴である携帯性を考えると、キャリーバッグの出来は重要な要素である。次にフレームパーツと船体布の質の高さである。私が聞かされていたのとは大違いであった。カヤックパーツは全てこの一つのキャリーバッグに収納出来、良く考えられたバッグである。完全なハーネス式で、ショルダーストラップとヒップベルトの両方にはパッドが入っている。また、ショルダーストラップ上部には、リフターストラップが付きバックのウエイトバランスを調節出来るようになっている。この様に良く出来たキャリーバッグを付けているの他のメーカーはフェザークラフト社だけである。良いザックメーカーの物は胴体の長さによって調節出来るシステムであるが、フジタのキャリーバッグはそうした調節式ではない。フェザークラフトのバッグは調節可能である。
しかしながら、フジタのキャリーバッグは他のメーカーのものより格段に優れていると言える。バッグの所々にストラップやDリングなどが付き、必要に応じて様々なギアー類を取り付けるのに大変便利である。また、コンプレッションベルトやパドル用の固定ベルトなども付き、カートに載せ、公共の交通手段で運ぶ際にも便利である。また、分解式カートも十分入る大きさなので、パドリング中はこのバッグに入れカヤック内に収納可能である。
フレームは見るからに太く頑丈である。リブは質の高いマリン用合板に3層のコーティングを施し、厚さやデザインも実にがっしりしており、貧弱な点は全くない。リブを割るのは返って難しいだろう。ウッドフレームを採用している有名なメーカーの物と同様の強度があるように思える。
各フレームセクションの縦ポールとリブは、ノーティレイの様に全てつながっている。クロスリブが回転して、バンジーコードでつながった縦のフレームポールに固定出来るようになっている。これらの縦フレームのポールは厚手のグラスファイバー製で、十分な太さである。一つ強度的に疑問なのが、各ジョイントで使われているピンとリベットである。丈夫そうではあるが、私としてはこうした形状のピン留めは初めて見るので多少の疑問が湧いたのである。ただ、これらのピンはフレームを接合しているだけなので、壊れても大した問題では無く、フィールドで簡単に修理可能であろう。
デッキ素材はポリエステル繊維にウレタンをラミネートし、さらに外側は模様のついたウレタンコーティング処理した素材である。私がテストしたモデルは、エクスペディションタイプのハル素材で、ケブラーの糸を混ぜたポリエステルの生地に、PVCコーティング処理した素材である。キールに沿って何本かのストリップ補強がしてある。ハルの部材は全て電気溶着されているが、ハルとデッキの接合部は縫合しているのみなので、ここからの浸水が多少ある。また、縫合部の一部に粗い部分が見られる。このモデルは縫合部等にシーム処理をお勧めする。
デッキにはハッチが前後にあり、ネオプレン製のインナーカバーとナイロンのアウターカバーの2重になっている。また、バンジーコードのデッキラインに、セーフティーラインが標準装備されている。[/vc_column_text][vc_column_text]組み立てインプレッション
私のテストしたモデルに付いてきた説明書は、1枚物のイラストも無い物であった。同梱されていた小冊子のマニュアルにはイラストや写真があり細かな説明があるが、残念ながら日本語だった。しかしながら、驚いた事に組み立ては至って簡単で、粗末な英文の取り説でも十分事足りたのである。
フレームは前後2分割で、各ハーフフレームはA・B・C3つのセクションに別れている。この3つをつなげると、フレームの半分が完成する。組み立ては簡単で、チャインとチャイン、キールとキール、ガンネルとガンネルをつなぎあわせていけばいいのである。一方向にしか接続出来ないので間違う事がないのは良い事である。クロスリブは前後無いように思えるが、前後が決っている。クロスリブの各Uブラケットに、フレームポールが固定される際、いくらか角度が付いているので、クロスリブの取り付ける向きが重要である。アルファベットの書かれている側を全てコクピット側にして組み立てていった所、コクピットに一番近いクロスリブがこの向きでは違う事が直ぐ気づいた。日本語の書かれている側をコクピット側にすると上手く行った。(クロスリブに書かれたアルファベットの場所が間違っていたのだろう。)
2つのハーフフレームは、ヒンジの付いたグラスファイバーのフレームポールで、クレッパーやフォルボットの様に押し込む方式である。強度的に物足りなさを感じるが、このモデルのサイズや軽量さを考えるとこれ位で十分なのかも知れない。それに組み立て時、この部分を押し込む際はさほど力は必要ないのである。コクピットエリアは実に多くのフレームポールがある印象を受ける。キールのジョイント部分は、2ピースのフロアーボードでカバーされコクピット内の補強にもなっている。
コーミングはデッキにビルトインされているので、パーツの紛失やアセンブリーの必要も無い。総じてアセンブリーに要する時間は少ないカヤックである。慣れれば15分でだいたいは組みあがるだろう。また、力の要る部分も少ないのも良い。リブとガンネルのコネクションが緩い部分もあるが、力は使わなくて済む。しかしながら、ポールフレームの多くにスナップボタンが付き、ロックするシステムである点は多少面倒である。慣れれば直ぐに分かるが、始めはどのフレームがスナップボタン付きか迷うかも知れないし、分解時も時間を要してしまう。また、このボタンが小さい事と、組んで暫く置いておいた際のサビ付きの問題が気になる所である。この部分にサビ止めなどを定期的に塗ると良いだろう。[/vc_column_text][vc_column_text]試乗インプレッション
PE480の全体の乗り心地は、がっしりした安心感と安定感そして軽快なスピード性能である。16フィート弱にしては長い喫水ラインなので、良いツーリングモデルと言えるだろう。デッキの高さも、他のメーカーのモデルに比べると低く抑えられているので、パドリングもし易い。では各特徴を見ていこう。

安定性:全幅24インチにしては大きな安定性があり、他のフォールディングカヤックに比べて細身な印象を受ける。エアースポンソンが大きいのも、この安定性能に寄与しているがエアースポンソンを膨らましていない状態でもどっしりした安定感があり、初期安定性は抜群である。このモデルでは不安定に感じる事はまずないだろう。仮にボートなどの横波を突然受けたとしても、沈する程のフラつきは起きないだろう。また、次期安定性も良く、横にリーンした際もねばり強く、急に沈する感じも受ける事はない。
荒れたコンディションでも、このモデルであればリラックスしたパドリングを楽しめるだろう。ハードシェル専門のパドラーにとってはどっしりしすぎているかも知れないが、安定感に慣れたフォールディングカヤッカーにとっては心地良い乗り味である。

機動性:リーンもとてもし易いので、カーブターンも可能である。コクピット内にあるインナーストリンガーが、コクピット内のリジット性を高めているのでリーンする際に安心感がある。また、このストリンガーがニーブレースの役目もしている。レスポンスも高く、楽なストロークでクイックなターンが出来る。

直進性:これに関しては興味深い印象を受けた。横風や横波に対しても高い直進性があり、かなり強い風でも、風上に向いてしまうウェザーコッキングの傾向が少ない。しかし、追い波や追い風では、常にラダーストロークが必要だった。他のカヤックでもこうしたコンディションでは同様にラダーストロークは必要ではある。フォールディングクラフト社の意見では、強風下ではフェザークラフトのスケッグを利用すると、直進性が高まるとの事である。

スピード:全体的に、水面を滑る様なスピード感があるカヤックである。これはこのモデルの全長と全幅のサイズバランス、そして長い喫水線と張り出しの小さいバウ、スターン形状のお陰である。特にバウの形状がシャープで、水を切り裂きスムースなエントリーを可能にしているからである。低めに抑えられたコクピットポジションも、効率的なパドリングを可能にし、小さなパドラーでも無理なくパドリングが可能である。[/vc_column_text][/vc_column][/vc_row]