本日は午後からアルピナ2-430の修理とメンテナンスをしました。
フレーム、船体布とも大きな損傷はありませんでしたが、数点の部品交換と
縦通パイプ(ガンネル・チャイン)やキールをリブフレームと接合するチャンネルの
増し締め、そしてパイプ表面のクリーニングと継芯部のオイル塗布を行いました。
今回の記事では腐食防止と、いつまでも組みやすい状態を保つための
日常の簡単な手入れ方法をご紹介します。
手入れ前の状態。写真のパーツはガンネルとチャインの後部です(スライドさせる部分)。
継芯の表面は乾き、真鍮のボタンは軽い緑青が出ています。
まずはアセトン(有機溶剤。ほとんどの油脂をよく溶かす特性あり)を含ませたウェスで
パイプの表面をよく拭きます。ご家庭でメンテナンスされる場合はアルコールやエタノールなどを
ご利用ください。消毒用エタノールならドラッグストアやホームセンターで500ml¥300前後で
販売されています。ちなみに霧吹きがあれば、ウェスやパーツへ直接それらを吹きかけることが
できるので便利です。霧吹きは100円ショップにもあると思いますが、おすすめはCANYON
(キャンヨン)という日本製商品です(握りが軽く、噴霧も均一、かつ拡散の調節可能)。
※汚れが少ない場合は水拭きで十分です。
パイプ表面をクリーニングしたのち、スプレー式の潤滑油を塗布します。
フジタカヌーではクレ5-56より防錆、防湿、潤滑性が高いマリン用の6-66を使用しています。
19mm径のパイプにはごく少量、継芯の16mm径パイプやボタンには多すぎない程度に
塗布します。ボタンがある継芯には、ボタンにオイルを直接吹きかけて
ウエスで継芯全体を軽く磨くように広げます。
潤滑油を塗った状態。
1枚目の写真と比べてパイプ表面やボタンの状態の違いが分かるでしょうか。
潤滑油を吹きかける時はこのようにパイプをずらすと、手を離しても接続されませんので
作業しやすいです。テーブルの汚れ防止には写真のようにウエスなどを敷いてください。
ボタン部や継芯、後部スライド部に潤滑油が塗布されていれば
アルミの保護になると同時に、組み立てが非常にスムーズになります。
これらのメンテナンスは常時する必要はないですが、長期にわたって使用しない時や
湿度が高い夏前後は定期的に手入れすると、いつまでも良好な状態を保てます。
※海での使用後はもちろんのこと、使用前にプレメンテナンスをしていただくと効果的です。
海水での使用後は毎回塩抜きしてから、上記のメンテナンスをしてください。
クリーニングはする必要がなければ省略してください。
今回の修理依頼では、「今後も大切に乗り続けたい」とのお手紙が同封されていました。
フジタカヌーのファルトボートが、いつまでもアウトドアでの良き道具となりますように。
フジタカヌー 上田洋樹
フレームビルダーUのフジタカヌー製ファルトボートのパーツ紹介(ストリンガーカップ)
ある時はツアーガイド、またある時はカヌースクールのインストラクター
そしてまたある時はファルトボートのフレームビルダーの上田です。
お礼が遅くなりましたが、皆さん毎回コメントありがとうございます。
返事をしないままですが、どのコメントもいつもうれしく拝読しています。
今回はファルトボートの部品について。
先日の横浜ボートショーではフジタカヌーのブースの来てくださった方々から
よくこんなご質問がありました。
「フジタカヌーの折りたたみカヌーは他社製品とどこが違うのか?」
製品の概要はカタログやホームページでご紹介していますので
ここでは、あまり知られていないフジタカヌー独自のこだわりをお伝えします。
ファルトボートに使用しているインナーストリンガー用のカップ。
一見するとごく平凡な部品に見えますが、実はこれはアルミ丸棒の無垢材から
削りだしているのです。俗に「削りだし」と言われる製法です。
簡易的な部品と違い、とても高価なんですよ。
アルミフレームのアルピナシリーズではシングル、タンデムどちらにも計6個
グラスフレームのPEシリーズ・シングル艇では計4使われています。
アルピナ2-430のフレーム。
着座して足を開いた際に太ももの上を通るパイプが「インナーストリンガー」です。
カップはこのストリンガーを受けるための部品です。
私はフレームの修理も行なうのですが、今までこの部品の破損を見たことがありません。
それだけ丈夫なんです。ちなみにストリンガーの真鍮製ボタン用のバネはステンレスです。
あまり目にする機会がないパーツにも耐久性への配慮を怠りません。
これからも折にふれて設計や部品など、フジタカヌーの考えをご紹介しますね。
朝、カヌーラック前で土筆を発見。
気付かないうちに大きく育っていました。もうすっかり春です。