本日、明日と地元の中学生2名が社会学習でファルトボートの製作を体験。
会長・藤田清による工場案内の後、さっそく作業に取り組んでもらいました。
PE-2-470・500のリブフレームの面取り風景。
作業に入る前に、どの艇のどの部分のパーツを仕上げるのか、またその商品は
いくらするのかといった現実的な話をして、数あるメーカーの中からフジタカヌーを
選んでいただいた人のために、丁寧に仕上げるんだよと伝えました。
最初は話をしながら作業を進めていたため、仕事を終えるまでは私語は禁止で
今、手にしている部品としっかり向き合うように話したところ、2人とも真剣に作業を
進めるようになりました。とても素直な少年でした。
午後からの作業風景。
まずはこの日に持ち帰ってもらう、フジタカヌー特製キーホルダーの製作。
職場体験は毎年秋にあって、これまでは工作機械は使用しませんでしたが
できる範囲での経験をしてもらいたくて、今年はボール盤での作業も行いました。
2人ともいい目をしています。
2人の本日最後の作業結果。
初めての体験で、ここまで丁寧に仕上げることができました。
パーフェクトです。
ここからは私が繰り返し研磨と塗装を施して、これらの部品を仕上げます。
最後まで丁寧にファルトの製作に取り組んでくれてありがとう。
明日は縫製の体験ですが、今日の気持ちを忘れずに頑張ってください。
大人になっても、カヤックを趣味の一つにしてくださいね。
上田洋樹
京都笠置町から水都大阪へ アルピナ1-450進水ツーリング報告【1】
鳥羽・二見浦シーカヤッキングツアーが中止となり、カヌースクールもなかった6月25日土曜日、
かねてから計画していた新艇アルピナ1-450の進水を木津川で決行しました。
今回の航程はフジタカヌーの工房がある京都府南部の笠置町から大阪の毛馬までの約65km。
新艇の進水地は和歌山の白浜や徳島の海部川など、いくつも候補がありましたが
最初のツーリングは、このファルトボートが生まれた笠置町から始めることに。
ツーリングの詳細は日本カヌー普及協会の会報「ミニパドル」でお伝えするとして
このブログではロングツーリングで出会った風景をご紹介します。
【笠置〜木津・泉大橋 約13km】
2011年6月25日土曜日18時18分、ツーリングの準備が完了して西日と笠置大橋を背景に。
5分ほどウォーミングアップしてから、18時30分に獅子岩からツーリングを始めました。
天気予報は25日夕方から26日午前まで晴れ。加茂の水位はこの時点で−2.1m前後。
風はほとんどなく絶好のコンディションでした。
今回はさまざまな雲と出会った旅でもありました。
19時29分、加茂町の恭仁大橋を通過。
刻々と変化する空の明るさ。左岸のかなたには積乱雲。
ここでは雷のすさまじい光を何度も目撃。夏の始まりを感じた瞬間でした。
夕暮れから空がゆっくりと青くなり、日没前に国道163号線と木津川が
最も接近する地点で1度目の休憩。これからのナイトツーリングに備えて
遅い昼食を済ませてからフラッシュライトをカヤックに装着しました。
今夜の照明はカヤックのフラッシュライトとヘッドランプの2つ。
20時33分、500mほど前方に木津の泉大橋が見えてきました。
20時40分の泉大橋。いよいよ本格的なナイトツーリングが始まります。
つづく
フジタカヌー 上田洋樹
振り向けばアライグマ アニマルレスキューの午後
現在、ファルトボートのご注文はPE-2-470ノアが5艇(その他、アルピナ-1-310など)。
2人艇の470ノア(500ノアも同様)はフジタカヌーの現行モデルで最も部品点数が多く
(シングル艇にはない木製コーミングや背もたれ棒、私たちが「ブーメラン」と呼ぶ
リアコーミング、フロアボードもシングル艇が2枚に対して、タンデム艇は3枚。)
今週はひたすら木製フレームの研磨と塗装の毎日でした。
本日の午後、塗装ブースで中央リブフレームの仕上げの塗装を施していると
背後に何かの気配と視線を感じた。
イタチ・・・?
よく見ればタヌキの子供でした(自分の中でタヌキと理解するまで十数秒)。
※その後アライグマと判明しました。
こんな顔です。
フジタブランドのカヤックを生産しているフジタカヌー笠置工場は自然豊かな緑に囲まれています。
毎日いるとそれが当たり前のように思ってしまいますが、里山にたたずむ工房といった趣がある
素敵なところです。
現在、工場のすぐ隣の田は田植え直後で、水の鏡の一面に苗の緑が規則正しく並んでいます。
つい最近までは雉(最後に写真あり)の親子が田植え前の田で餌をついばんでいました。
猿の群れ(50匹以上)の大移動や猪の親子(うり坊はとても愛らしい)もよく見かけます。
過去にはカワセミが迷い込んでしまったのか、工場1階の鉄筋の梁にずっとたたずんでいた
こともあります。今はツバメの雛が玄関にある巣ですくすくと育っています。
じきに巣立っていくことでしょう。
とかげ、ヤモリ、蛇など、まだまだ野生の生き物は数多く生息しています。
話をアライグマに戻します。
今は使っていない旧型のコンプレッサーと壁の間に挟まって
身動きが取れなくなってしまった子供たち。ここから救出劇の始まりです。
写真でご覧になられると、ただただ可愛い小動物に見えますが
そこは野生の動物、少しでも近づこうものなら牙をむいて威嚇してきます。
まずは手前の1匹の首根っこをつかんで救出。
小柄な体からは想像できないほどの大きな鳴き声に思わずビビッてしまいました・・・。
もう1匹は逃走。
塗装の途中でしたので、姿を見かけるまでしばらくレスキューは中断。
約1時間後、寂しそうな鳴き声で隠れている場所が分かりました。
ここから、虫取り用の網をたずさえて、捕まえるまでに20分。
網はすぐに破れて、結局は素手での捕獲。
工房の隅の捕まえにくい場所に逃げ込み、不自然な体勢で格闘したので
首の筋を寝違えたように痛め、すり傷をつくり、衣類は汚れ、鋭い爪でひっかかれ
さらにはおしっこまでかけられ、さんざんな午後でした・・・。
でも、無事に救出することができ、やり遂げた充実感で今日という日を終えることができました。
今後、スクールやツアーで、カヤックやテントの中に「アライグマがいて怖くて近づけない」
という場合はスタッフにすべてをおまかせください。
かなりビビッっているかも知れませんが、なんとかします。
京都府の南端に位置する、こんな野生動物の宝庫のフジタカヌー笠置工場は
カヌースクールを終えて、わかさぎ温泉にご入浴されたのち、お時間がございましたら
いつでもご見学いただけます。
日本のカヌーの歴史とファルトボートの製作現場と自然。
カヌースクールと合わせて、いつでもお越しくださいませ。
以上、かなり強引にアライグマとカヌースクールを結びつけてみました。
【アライグマ】
哺乳綱食肉目アライグマ科アライグマ属に分類される夜行性の哺乳類。
体長約55cm、体重約5-8kg、灰褐色の体毛をもち、目の周りから頬にかけて黒い斑紋がある。
狸とよく似ているが、アライグマには眉間の縞、白い耳の縁、白いひげがあり
長くふさふさとした黒い横縞がある尾や5本の長い指でその違いを見分けることができる。
水辺近くの森林に生息。前足を器用に使うことができ、木登りや泳ぎが得意。
春には4-6頭の子供を生む。野生下では滅多に人を襲うことはないが
アライグマは狂犬病に感染している可能性があり、注意を要する動物。
子供のアライグマの首根っこをつかむと、足をばたつかせてすさまじい声で鳴き続ける。
【タヌキ】
日本には北海道のエゾタヌキと本州・四国・九州のホンドタヌキの2亜種が棲息。
エゾタヌキはホンドタヌキよりやや被毛が長く、四肢もやや長め。
【ホンドタヌキ】
ネコ目イヌ科タヌキ属に属するタヌキの日本産亜種。
顔の目の周りの黒い模様から「八文字」と呼称される。
春から夏にかけては子育ての時期。
3月中旬に巣穴の中で通常は3 – 5匹出産。
5月初頭になると幼獣は親タヌキ夫婦と一緒に巣穴の外に出て行動するようになり
食べ物も自分で見つけられるようになる。
夏は親子で行動する。
秋は子どもが親離れをする時期。
上田洋樹
PE-1-400・480スペリオ ファルトボートのリブフレームが完成するまで 【最終回】
最後はリブフレームとデッキ・キールパイプを割りピンで接続します。
リブフレーム中央の上下にあるピンをパイプに挿入して
割りピンが180度開くようにハンマーでピンを外側に打ち込みます。
デッキとキールを接続して製造の工程が完了。
組み立てはこの状態で他の部品と接続します。
次回はアルミフレーム艇のアルピナシリーズのリブフレームについてご紹介します。
上田洋樹
PE-1-400・480スペリオ ファルトボートのリブフレームが完成するまで その【3】
3度目の塗装から一晩乾燥させると、
このように蛍光灯の光を反射するほどの仕上がりとなります。
この時点で光の反射がぼんやりとしている場合は1000番の紙やすりで
軽く研磨して4度目の塗装を施します。
塗装が完了したら、次は金具を取り付けます。
リベットを打ち込む専用のリベッター(リベットマシン)という機械で
マリン合板のリブフレームに金物や金具を取り付けます。
リブフレーム中央上部は「フレーム回転金物」を取り付けます。
最終的にはこの金物から出ているステンレス製のピンにグラスファイバー製の
デッキパイプを割りピンで接続します。
※実際には焼印がない面でリベットを打ち込みます。
ガンネルパイプと接続するためのガンネル金具も取り付けます。
ガンネル金具は開きの角度が80・90・100度と3種類あり、リブフレームによって打ち分けます。
写真は中央前側のリブフレームですので、90度のガンネル金具を使用しています。
ガンネル金具は金具側からリベットを打ち込みます。
片側からの打ち込みでは、
このように裏面のリベットが合板の表面より飛び出た状態(左)ですので
合板と同じか、コンマ数ミリ合板の表面より沈むようにリベットを打ち込みます(右)。
リベッターは圧縮空気で作動しますが、スイッチの操作は足元にあるペダルで行います。
金具や金物がない面でペダルを必要以上に踏み続けると、リベットがどこまでも沈んでいくので
この写真のような時は慎重にペダルを踏み込んでいきます。
リベッターを使用する工程は熟練とまではいきませんが、かなりの慣れが必要です。
この工程で金具とは関係のないところでペダルを踏んでしまうと、その一瞬でB級の部品となり
新艇としては出荷できません。これまでの作業も水の泡となります。
金物いろいろ
リベットはアルミ製。
長さは14mmから2mm刻みで8種類あります。
リベッターでの工程のあとはインナーストリンガー(着座した時に太もも上側にあるパイプ)を
受けるためのカップを取り付けます。
1箇所でカップ・ボルト・ナットは各1個、ステンレス製ワッシャーは2枚使用します。
ナットは「セルフロックナット」というゆるみがでない特別な仕様。
ここからねじ山が3〜4周ほど出るまでナットを締めていきます。
これでリブフレームがようやく完成。
最後にデッキ・キールパイプを接続します。
次回が最終回です。
上田洋樹
PE-1-400・480スペリオ ファルトボートのリブフレームが完成するまで その【2】
2度目のニス塗装が乾いたら、再び研磨作業です。
2度目(塗装の回数は3回)の塗装を終えた状態。
ほんの少し艶がでてきました。
焼印部は木材の表面よりわずかに低くなりますので、1度目の研磨の時に
周囲の焦げをしっかりと落とすことが大切です。
この状態から2度目の研磨の最後に使用した番数の紙やすりで磨き
さらに番数をあげて磨き上げていきます。
3度目の研磨を終えると、塗装前に真鍮製のハトメを打ちます。
円筒形のハトメをハトメ打ちとハンマーを使用して
リブフレームに両端が均等にめくれるように打ち込みます
点が3つあると人の顔に見えるといいますが、この部分も顔のようです。
やや驚いた表情です。
3度目の研磨とハトメ打ちが終了した状態。
1、2度目と同じようにエアーガンで細かいおが屑を吹き飛ばしてから3度目の塗装を施します。
3度目の塗装からは、より艶がでるように仕上げていきます。
塗装は回数ごとにニスのマリン合板への付着状態が異なります。
1度目(塗装1または2回)・・・木材への浸透。
2度目(2回)・・・浸透から飽和状態へ。ここで塗装膜の下地を作ります。
3度目(2回)・・・皮膜形成。ニスの透明感がある層を重ねて艶がでるように仕上げます。
3度目を終えてまだ蛍光灯の光を反射しないような仕上がりの場合は4度目の塗装を施します。
次回は塗装が仕上がった状態と塗装後の工程をご紹介します。
上田洋樹